だ、誰だ?!
家路に着く私たちに遠くから手を振る男がいた。
4年後のヨハンネスでした。
半ズボンとモッズコートという浮浪者風のルックだったので
カミッラのホームレスフレンズかとばかり思ったが、
近くで見れば、以前よりおっさんになっていようとも、
あの目の色だけは忘れません。
それでも私はずっと誰だか気が付かないフリをしてしまいました。
ニコニコで私に話しかけてくれますが、全てノルウェー語ですよ。
“知り合ったの5年前で、その後カミッラの前に住んでいたアパートで
一緒に食事までしたのに、覚えてない?”
前はノルウェー語で話していたなど指摘され、
なんだか、頭の中が“ベルサイユのばら”だった。
マリーアントワネットとフェルゼンの再会シーンを思い出して、
化粧が剥げて、ぼさぼさ頭の私と
ホームレス風のヨハンネスの再会では漫画のようには美しくない。
一人で死にそうなくらい笑いを我慢していた。
4年後のヨハンネスは少し太って、背が低くなったように見えるけど、
空気のように優しい存在そのもの
しばらく会っていなかった二人は近況報告など、しばらく立ち話をしていたが、
10時を過ぎて男性を家に招くようなことは、カミッラにとってタブーなので
そのまま解散しました(相手はヨハンネスだぞ、と私は言いたい)。
そして、快晴の朝、とっても忙しい一日がまた始まります。
Razika - Syndere i sommersol
朝になって、カミッラは翻訳の派遣会社から呼び出しがかかったので、
先に家をでて、11時にオスロ中央駅で待ち合わせということになった。
その間、やっと手に入れた自由時間だが、
この時間で冷蔵庫や食器、掃除用具のチェックや
ポイントカードをまとめていたら時間が過ぎてしまった。
私は無駄遣いしたくなかったので、
奴が忘れているだろうと思われる食材で、簡単に食事を済ませてから出かけた。
無駄な出費を避けるために!
カミッラはまだランチをしていないので、駅近くの切り売りピザの店へ。
二人で半分こできる大きな一枚だが、ナポリだった100円もしないものを
5倍くらい出して注文していた上、炭酸飲料まで購入。
キノットというイタリアではおなじみの苦みのある炭酸飲料も、
見たこともないボトルに入っている上、金額は10倍だ。
夕食はバーベキューにしようとのことです。
食後は中近東系のおっさんがいるスーパーで
好き放題買い物をしていました。
ナスとか毛のついたままのトウモロコシとか・・・
誰が調理すんの?!私だよ!!
さて、バーベキュー?
新品の簡易バーベキューセット。網の上に乗っているのはシャンピニオン。
ピンクのバケツには空気穴があり、中に木炭を入れて、
網をその上に置いて焼いて行くという、キャンプなどで活躍しそうなやつですが、
これ、どこにセットするつもり?
アパートの裏庭です。
自転車置き場になっていて、高いフェンスとゴミ箱に囲まれた
しゃがんで火を見守ります。
イタリアではまず、木を燃やして炭にしてから、その火で焼くのだけど
カミッラは着火剤でメラメラ炭を燃やしてその火で焼こうとするので
すぐに火が消えます。
点いては消える炎を眺めている間に雨が降り始めたので
部屋に帰ってフライパンで調理して食べました…虚しい。
ミサの後に教会でお話するジェラール修道士とカミッラ。
この時期の教会はお日様が覗くと明るい。
ジェラール修道士は私の新調したカメラに早速気が付いて
教会写真をとるポイントについて教えてくれた。
教会を後にしたのが、8時近く。
その後、図書館でDVDを借りる。
前に来たときは、よくある普通の図書館だったのに、
今は自動貸し出し機があり、係り員は常駐していないようだった。
まあ、この用事が済めば、家でゆっくりできるだろうとホッとしたのだが・・・
“ストルペルを探しているから、手伝って。”
ス、ストルペル?
説明をろくにしないまま、図書館から続く道をどんどん歩いて、
家の方向と逆に進んでいく。
何をどういう目的で探しているのか全く見当のつかない私は
この時、先の見えない不安に駆られた。
道ですれ違う人に片っ端から声をかけて
“ストルペル見なかった?”と質問しまくるが、
誰一人それに答えられる人はいない。
会話の中でなんとくわかったのは、道端に立てられた目印のようなもの。
公園の小高い丘を上り詰めたところにそれはあった。
これのことでした。
QRコードがあるので、携帯電話のカメラでスキャンするのだろうと
撮影を勧めたが、カミッラの携帯では読めないようだった。
なので、私のカメラで撮影してほしいと言われて撮った。
この棒を撮影するためにメモリを使いたくない・・・けど、
これで家に帰れる、やれやれ・・・時刻は11時を過ぎた。
帰宅後、カミッラに詳しい説明を冷静に聞くと、
オスロに沢山建てられているので
それを全部見つけるのだという。
更に!
数日後に判明したのだが、
このストルペルというのは、オスロだけでなく、
ノルウェー中に立てられていて
オリエンテーリングのポイント地点とされ、
専用のアプリを携帯電話にダウンロードして、アカウントを作り、
そこからQRコードを記録して、ポイント加算されるのだとか。
立てられている地点の地図や場所もそこから見ることが出来、
ポイントと見つけた数を競うそうです。
努力と我慢という景品がもらえることだけは何となく予感している。
この先、この“ストルペル地獄”が私の滞在中の
一番の抗うつ剤となるのだが、
それはまるでジャンキーが更生施設で断薬するような苦しみでもあった!