ナポリのグレノーブルフランス文化会館で図書館司書をしていた彼は
そのスウィートな雰囲気でネコネコアパートにフランスブームをもたらした。
みんなが大好きだったブルーノは、金曜日にはフレンチディナーを用意する。
金曜日は私もカルメンアパートに戻る日であったため、
変な来客である日本人の私もこのスウィートディナーに参加、
材料費は彼持ちなのでたまったもんじゃなかっただろうが、図々しくお邪魔させてもらった。
見た目がちょっとグロテスクな鮭とポロねぎのキッシュ
カリフラワーのグラタン
チョコレートクリームのロールケーキ、ブッシュ・ド・ノエル
クリスマスではないが、彼のおもてなしスウィートネス。
自分のつたないイタリア語を申し訳なさそうにしている仕草が、
とっても謙虚で私達はすぐに彼のファンになってしまった。
カルメンには申し訳ないが、私がうれしかったのは音楽や映画の話ができることであった。
高校生のときに見た、聴いた映画や音楽をシェアできる友達というのはイタリアに来てから
私が最も必要としていたことだった。
それ以上に、彼に必要以上の興味を注いでしまったにはもう一つ理由があった。
ER DU HOMO?
そう見えるだけで、片付けたかったのだが、
仕草がとってもかわいいくて、自分が男だったら、たくましすぎるナポリ姉ちゃんより
彼を選ぶであろう・・・、それくらいそれっぽい。
カルメンとアントニオと3人で異端会議を開いてみたものの、
"かわいいからそれで良し"で幕を閉じた。
カルメンは信心深い家の娘なので、
同性愛という存在についてちょっと閉鎖的なのだが、
彼にはそれすら吹き飛ばすキラキラスウィート・ストリームが備わっていた。
この時期、私達の間でフレンチブームが吹き荒れ、
カルメンはフランス輸入の服飾店で無駄使いをして、アントニオに怒られたし、
私は古代ギリシャ語そっちのけでフランス語の授業に通っていた。
私の繰り返すフランス語の発音練習に仏語禁止区域までできたほど、
熱を入れていたのだが、全く実にならなかった。
その後、ブルーノは仕事先の近くに別のアパートを借りて引越ししてしまった。
スウィートネスを失ってしまった私達、でもマルソー(写真下)がいるからいいか。
ブルーノが名付け親である。