経済的菜食主義という、悲しい部類のヴェジタリアンな私、
肉の金額は日本のほぼ3分の1とはいえ、
素敵なベルゲン貯金ができるという、とってもせこい理由で菜食しているのだが、
それ以上に肉に対して、全くの執着を感じないことも理由のひとつ。
この葉っぱ&豆食いにさらに拍車をかけた出来事が
イタリアで起こった。
それは・・・
サラミやハムなどの保存食作り。
お肉を見るのが苦手な方は、今回の記事、避けた方がいいかも。
かなりグロテスク。
数年前の2月、カルメン宅で行われる豚さんに感謝の保存食作りに
ナポリに来ていたふ~ちゃんと参加したのだが、
前日にこっそり、豚さん肉の加工が行われる倉庫を覗きに行くと・・・。
これはナンでしょう?
豚さんの小腸と大腸を洗って、
レモンと一緒に水につけてあるもの。
こちらはサラミを作るときに袋となる。
この工程をきちんとやらないと、
サラミが臭くなる。
昔、試食させられたボローニャ産ソーセージが
正しくその味だったのを覚えている。
"イタリアでは、この臭いもソーセージ本来の味"だと思ってやせ我慢して飲み込んだが、
一緒に試食させられたカルメンは
うんこ臭いと吐き出していた。
続いて豚さんの足。
ゼラチン質というのか?
肉食のアントニオが内緒で野菜の料理に
"だし"として放り込むことが度々あった。
折角奪った命だけど、
これを美味しいとはいえない。
千葉の太平洋側に住む
いとこたちは子供の頃から
ビーフジャーキーやこちらの豚足をぼりぼりと
食べて、現在は東方神鬼の追っかけになってしまった。肉食とミーハーの関係は未だ解明されていない。
内臓部分。
豚には捨てる部分がない。
肺は味が淡白なので、腎臓やすい臓、胃袋、心臓などと
細かく切り、トマトと唐辛子で味付けしたものを
パスタのソースにしたり、パンと食べたり・・・。
カルメン宅では一頭を畜産家から買い、
殺して持ってきてもらうようだ。
こちらでは伝統的に、大動脈を切って血抜きするという方法で命を奪う。
動物のお医者さんのアントニオの話しでは、
市場に出回る肉を生産する屠殺場では、脳みそにあたる部分に電極をあて、
電気ショック死させているとのことだ。
家の婆さんは若いときに、屠殺場で女中奉公していた、
豚さんが食卓に上がる、数少ない日(家のパパは魚フリークなので、週に2回ほどだった)は
必ず、豚さんの苦しみを語りだす。
そこでは頭をノミで割って殺すため、豚の断末魔を聞きながら暮らしたらしいが、
豚肉料理のまかないが多かったため、いい思いをしたとも言う・・・、
一番続いた仕事場だったそうで六ヶ月ほど、お世話になっていたようだ・・・、
90歳になった現在も、しょうが焼きを夕食のリクエストにするほど
豚のバラ肉好きだ。
豚さん加工作業の当日、
カルメンのママ、義理の妹アンナと山から、わざわざお手伝いに下りてきた親戚の伯母さん、
お肉の部分と脂肪分、皮、骨を分ける作業をしているところ。
大きい塊はハムやベーコンとして、塩漬けにされ、
数ヵ月後に燻して燻製となる。
会場は肉の生臭さ、鉄分のような血の臭い、アンモニア臭と
床掃除用の消毒液のにおいが立ち込め、
吐き気すらこみ上げて来る"死"の臭い。
ヌンツィア伯母さんも作業に加わって・・・
右下に見える、白い四角い物体は
豚さんの皮、コーティカ。
丸めて、トマトソースに入れて
だしをとったり、ローストして半透明になったゼラチン質を楽しむ・・・そうです。
脂肪分は大鍋で溶かして、ラードになる。
ラードを作った際に残る繊維質は
チッチョリといって、揚げピザの具になったり、スープなどにクルトンとして浮かべたり。
ラードはナポリ菓子に良く使われる。
代表的なナポリ菓子、スフォリアテッラにも、ふんだんに使われている。
安いピザ屋では、生地にラードが混ざっていたり・・・、
ビガンも真っ青なナポリピザ。
こちらがサラミ作りの大まかな工程。
1、ひき肉に味をつける。塩と粒のままの胡椒、物によってはクミンシード、唐辛子が入る。
2、ソーセージ用の搾り出し機で、洗っておいた腸に少しずつ詰めていく。
3、大腸に詰められた方のお肉、周りに唐辛子をまぶして紐で結ぶ。
4、腸の空気抜き。シャンパンのコルクに針がついたもので穴を開けていく。
一休み、一休み・・・。
休憩時間のオヤツはサラミの中身。
この状況で食べるというのか?
追い討ちをかけるように・・・その日のお昼ご飯。
この豚さんからもらった、お肉でだしをとったトマトのパスタ。
いくら大好物のベッレーチーズが掛かっていようと、
あの保存食作りに参加した後は、肉の臭いに敏感になり、
どうも食べれそうにない・・・・。
この作業に参加して以来、あまり執着していなかった肉を
もっと避けるようになった。
しばらくは肉屋の店先で、ぶら下がっている肉を見るのも嫌だったし、
スーパーのパック入り肉を見ただけで、あの臭いを思い出すまでになってしまった。
私にはやっぱりこちら・・・。
倉庫に保存されたサラミ。
真ん中に大腸サラミ、両端が小腸に詰められたもの、右端は唐辛子入り。
右端後方には、頸肉ハムとばら肉を丸めたベーコン。