ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

ギリシャOr中世?

今日は夕立のおかげで気温が下がり、いつもの頭痛がなかったので
少しだけ苦手な古代のお話。
 
私のホームタウンから電車で20分ほど南下すると、
世界遺産に登録されているギリシャ神殿群、パエストゥム(Paestum)に着く。
ここではアテネパルテノン神殿に次ぐ、保存状態のよいネプチューンの神殿と
その左右に少々崩れ気味の2つ神殿に公共広場や回廊、劇場、プールに墓などの跡が残り
世界大戦中にムッソリーニの指令を受けて発掘調査が行われた。
 
それ以前はイギリス貴族の"古代ロマンス・インスピレーション"の観光地として機能していたが、
神殿群は家畜小屋として利用させていた。
 
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ネプチューン神殿、発掘はうちの大学から抽選で選ばれた50人が、週替わりで行っている。
平地で海に近いため、中世にはサラセン人の攻撃から避けるため、人々は山間部へ非難、
そのため、残された少数の人々により、小さなコミュニティーが出来たのだが、
偉大なる考古学者アメデオ・マイウーリにより、中世の工程を全く無視した発掘調査が行われ、
中世の名残を知るのは彼の残した少々の発掘日記のみである。
 
 
 
何じゃこりゃ?
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これは遺跡に隣接した博物館に収められている棺おけ絵画の代表作"飛び込み男の墓"である。
紀元前4世紀前半、ギリシャ人の傭兵として仕えていたイタリア原住民、ルカニア人に政権が移る。
この時代には唯一の絵画として考古学上とっても貴重な例のようだ。
確かに美術史としてのギリシャ絵画はオーナメントセラミックに描かれた物を差し、
棺おけ絵画、しかもこのように色彩豊かなものは例外的であるといって良い。
 
それでは、この謎めいた絵画の意味とは?
 
飛び込み台のような物、飛び込む男、水辺、樹木が描かれている。
 
仮説1: 墓に眠る主は生前、飛び込みを得意としていた人物であった。
ローマ時代の墓石には職業やそれに関するものを刻んでいるものが多いように、
こちらも生前の記憶を絵画に託して・・・。
 
仮説2: 飛ぶ込む行為を別世界(死後の世界)へ旅立つことを意味している。
イタリア語でエスカトロジアというのだが、現実世界と別世界への境界線を意味する。
このエスカトロジアを描いた作品である。
 
仮説3: 意味は無く、なんとなく・・・。この仮説は数年前の学会でアメリカ人の学者が提出した論文である。
 
最後の仮説にはかなりズッコケさせられるが、それを眉一つ変えずに淡々と語る教授、
この仮説、意外と有力かもしれない、考古学者は泥臭い作業をしている割にはロマンスを追い過ぎだ、
これはこの時代に興味の無い私だから少々冷静な目で見ることが出来るのだが、
それが、修道院や教会跡になったらエキスプローション想像力だろうな。
 
ついでに、キリスト教の伝来まで火葬が主流であり、
煙と共にアルカディアの神々の元に行けると考えられていた。
その際には二枚の硬貨を添えられ、これは三途の川でカロンに渡す船賃となる。
棺おけには残った骨と硬貨、生前に使っていた縁の品(男:剣や鎧など戦闘に関するもの、女:櫛や台所用品)
そして米や蜂蜜などが入れられる。
 
 
パエストゥムには6世紀の初代キリスト教様式の教会が存在するのだが、
とても小さい教会は柱で区切られた3廊式、
壁などは石造りがむき出しの状態であり、雰囲気がある。
現在も通常的にミサが行われ、クリスマスには祭壇にプレゼーピオが飾られる。
正面の装飾はしっかりバロック様式になっているのが残念である。