ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

見えないように生きる

一週間前に大家の母親が亡くなり、私は急に慌てだしてしまいました。

 
書類上、私の現在住んでいる家は大家の母親のものだったので、
遺産分割の関係で、家を売ることにしたようです。
 
つまり、私たちは家を追われることになりました。
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私の学生ビザも8月に切れるので、これ以上イタリアにいるのは難しくなります。
 
なので、早いことノルウェーに移住しようと考えているんですが、
仕事を見つけるには、もう少し活動的にならないといけません。
 
そこでカミッラに仕事探しにノルウェーに行こうと思う旨をメールで知らせると
意外な返事が返ってきました。
 
ノルウェーに来る前にイタリアの永久滞在許可証を取得しなければ、来てはいけない。”
 
それの一点張りで、全く話になりません。
 
それでは、イタリアの滞在許可証はどうやって取得するのでしょうか?
 
ここでちょっと、イタリアの移民局事情をお知らせしますね。
 
①仕事で滞在の場合
仕事の場合は契約を結ばない限りは無理です。
南イタリアでは、地元のイタリア人でさえ、仕事の契約を結んでいる人は少数で
ほとんどが闇仕事と呼ばれる、契約なしで税金の支払いをしない方法をとっています。
 
ここでちょっと紹介したい本があります。
 
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Con la Voce di un altro
パオロ・アポリト
 
私の大学で一番有名な文化人類学の教授が書いた
南イタリアの問題を倫理的に記したドキュメンタリーを
教授の視点からひも解いていくという一冊。
 
80年代に南イタリア山間部の小さな村で起こった祈祷師殺人事件。
 
60代の婦人が、ある日突然別人の声で予言を始めたことから始まる。
その声は数年前に事故で亡くなった甥っ子であると語り、
声を通じて、見えない世界との交信を行い
悩み相談を行うようになったが、
その噂が広まり、お布施が集まるようになると
村の廃寺に祈祷所を設け、その婦人はみるみるうちにお金持ちになった。
 
その様子を見ていた23歳の若者は、不当な方法でお金持ちになる
婦人に嫉妬を覚え、殺人に至る。
皆の見ている前で、猟銃を突き付け殺したのだ。
 
教授の見解によれば、将来が全く見えない貧しい若者の絶望感が
信憑性の全くない、甥っ子の死を利用した霊感商法
不当にお金持ちになっていく婦人を見て腹が立ち、突発的な行動に出たのではないかという。
 
 
 
南イタリアではこのように、まともな仕事をするのは、
地元の人でも難しいです。
英語圏の人たちは、英会話スクールなどで契約を結ぶことができますが、
私が日本語教師を私立学校でしていても、闇仕事でした。
 
ここで、滞在許可証の秘密をばらしてしまうのは、
在イタリア外国人にはタブーだと思いますが、
滞在許可を取得するために、自分の住んでいない地域でニセの契約を取得し、
比較的審査の甘い警察署で申請したり、
警察官と知り合いになったり、裏で手を回してもらったりと
まっとうに生きている私には理解できない方法で取得しているようです。
 
②定員制
例え、仕事先が契約を結んで書類を作成してくれても
観光、または学生ビザで入国の場合は仕事ビザに切り替える際に
年に10人ほどしか受け付けないそうです。
その定員枠に入るためには、入管管理局に毎日通い、
定員の許可書を待ち続けます。
 
これによって、まともな仕事に就いても出国せざるを得ない状況に追い込まれることがほとんどです。
ノルウェーにはこの制度がないので、仕事さえあれば
移民することができます。
 
 
③仕事の条件が悪すぎる
店員などの場合、週6日、9時に来て店の掃除をし、お昼に3時間の休憩を挟んで
8時半にお店を閉めて退勤となります。
お給料は月2~3万円程度で、ボーナスも時間外手当ももらえません。
レストランの場合はお客さんが帰るまで待つので、
朝の5時に仕事が終わったという話もよく聞きます。
日に2~3千円程度が手取りで渡されるので、店員よりも歩合はよさそうです。
 
私はバールでバイトしていたことがあります。
週六日、朝の7時に出勤、2時上がりということでしたが・・・
実際に上がるのは5時、6時です。
お給料は月5万円程度とチップ、コーヒー飲み放題。
シェアハウスを借り、市場で野菜を買えば、週末に友人とピザを食べに行けたかもしれないお給料。
ナポリ人にはうらやましいくらいの条件らしいですが、
そのバールはつぶれました。
 
④例え、イタリアの永久滞在許可証が手に入っても、
日本国籍保有者はノルウェーに3か月以上滞在できない(EU国籍者は6か月)。
 
私がノルウェーに移住するのは、修道院に入るためです。
一生をノルウェーで過ごすために行くのに、
イタリアの永久滞在許可証では間に合いません。
 
 
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イタリアには沢山の外国人が生活していますが、
どうやって、そんな困難な就労許可証を取得しているのか?
 
南イタリアでは見えないように生きることができます。
 
書類上、いてはいけない人たちも生活するだけの恩恵を受けることができます。
 
家を借りること、運転免許証を作ること、病院で治療を無料で受けること・・・
 
道端で商売しているニセブランド品売りのアフリカ系の方々、
税金の申請もしませんが、財務警察に気を付けていれば何とか生きていけるようです。
 
以前、イスラム系の路上物売りのおっさんが、日本で仕事をしたことがあると
大変日本を気に入っていました。
そのおっさん、お話をしている最中に、いきなり去って行ったことがありました。
500メートル先に警察がいたらしく、見つかると、まずい身分だったそうです。
 
でも、病気になれば病院に行ける。
 
 
日本の政治に反対しているので、政治的理由で移民したいと言っても、
表向きには経済大国、G8加盟国、法治国家となっている
猫かぶり日本しかしらないイタリアに
その手は通用しないようです。