オスロの目抜き通りカール・ヨハン通り、
右上に見える国産チョコメーカーであるFreiaチョコの看板が、
この国のナショナリズムを主張しています。
最後の日、カミッラは怪しい格好をして、弁護士のいるフレデリックスタッドへ。
光沢のある水色のチャイナシャツにピンクのタータンチェックスカート、
まるで"伝染るんです"の斉藤さんが実家に服を着て帰るといった
違和感のルックスで朝早くに出て行った。
私はゆっくり起きて、コーヒーを飲み、午後を待って何も食べずに神学校へ。
用事の済んだカミッラと待ち合わせが学校なので、仕方なく行くのだが、
会わないことにしたヨハンネスに出くわしてしまわないか少々心配。
でもヘレナやスウィートニーナ、リッカルドにお別れの挨拶をしなければいけない。
スウィートニーナはマサチューセッツでイタリアの歴史を勉強し、
カトリックの文化に入れ込んで洗礼まで受けている。
まだ上手でないイタリア語をおしゃべりで練習したい女の子で、
そのかわいらしい雰囲気から"スウィート"と呼ばれている。
スウィートニーナとお散歩で行った彫刻公園。
私より少しだけ背が高いので、妙な劣等感が芽生えず嬉しい。
真面目な女の子なので、下品な話をしてはいけない。
前日にスヌースをあげたリッカルドが近づいてきて、
彼の持っているスヌースのポーションを一つ、机の上に置いてお裾分けしてくれたが、
口の中に入れるものを机に直接置くという行為が、
公衆衛生に対してあまり敏感でない様子、ちょっと笑いそうになった。
続いてヘレナが来て、カミッラがいないことをいいことに
彼女の少し変わった振る舞いについて話しておいた。
スープの会で毎週会うのだから、何かやらかしたときに暖かい心で見て欲しいと
おせっかいなお願いをした。
カミッラに対して既にアスペルガーの疑いを持っていたのか、すぐに話が通じた。
噂をすれば・・・丁度カミッラが来て、出かけ先で買ってきた私へのプレゼントをくれた。
アウトレットで買ったという、フランス製のカーディガンだったが、
いつもパンクな私のルックを可愛い系にしてくれようと、
ガーリーなものを選んでくれたようだ・・・いつ着ようか?
私の弟君を思い出すような巨漢のアジア系にきび面の生徒が隣のテーブルで
楽しそうにおしゃべりしているのを横目に、
ヨハンネスのお友達の一人が外で大道芸に使うディアボロ(Diabolo)を始めた。
彼のおとなしい感じも弟君を思い出す・・・
北欧の若者は私の弟に似ている雰囲気を持っている人が多いのだ。
スウィートニーナとタイ人のシスターが一緒に挨拶に来て、
ドメニコ修道会所属のシスターとも少しフランス語でおしゃべり(本当に少し)、
家路に着く前に、カミッラからある提案が・・・。
"今回行っていない思い出の場所に行こう!"
思い出の場所?
連れて行かれたのは、あの怪しいアナキスタカフェだ。
前回の訪問でも連れて行かれた、共産主義者の集会所兼カフェ。
女の子は私達だけ、映画上映があるから見て行けといわれたけど、
B級の70年代映画で、このカフェにふさわしいアホな内容。
割と真面目そうな主催者と掃き溜めチックな廃れ雰囲気が、
ウディ・アレンの映画の世界で、笑いをこらえながら静かに退散することにした。
"このカフェにヨハンネスがいたら、面白かったのにね?"
"きれいな振りして、実はこのカフェに入り浸ってます、だったら間違えなくホレるね、
でも、お茶しよーって連れて行ったのがここだったら、ショックで逃げ出すよ。
かわいそうだから誘っちゃ駄目だよ。"
この日、カミッラからヨハンネスに挨拶に行ったかしつこく聞かれたので、
会いに行かなかったことは言わないことにした。
夜も十時を廻った頃、荷造りを終え、
一杯引っ掛けに繁華街へと向かった。
お互いジンジャーエールを注文し、
アジア系のハンサムなお兄さんバールマンに
少々見とれているカミッラ、私はお酒を飲まないけど、
酔っ払いになったつもりで煙草を吸い始めた経緯と、
ヨハンネスに対する遠ざかりたい気持ちを少々話してしまった。
カミッラはベルゲンの教会でミサを行ったベネディクトに
お熱なので、すぐに忘れてくれるだろう。
実際、あれほど何も知らせないでくれと言っておいたのに、
数日前に学校のお友達と彼のアパートに行ったという
メールが送られてきた、何てことないたった二行の文章に
一人で大泣きしてしまった。
ヘレナのファイスブックのページにも
端っこに小さく写っている彼の写真がある。
彼が牧師になったとき、ぜひともその第一報を私にも分けて欲しいものだ。
翌朝、空港行きのバスに乗り込み、来たときと同じ道を逆方向に進み、
見覚えのある景色と伴にノルウェーに着いた日のことを思い出した。
空港からオスロに行くまでの風景とそのときに感じていた
ノルウェーに来た嬉しい気分とバスの中で見た素敵なお兄さん。
オスロに着いたら、道でも聞こうと身構えていたのに・・・
前の席で女の子と楽しく話していたイタリア男に先を越されてしまった、
お前は女の子でもナンパしてろっ!と心の中で叫びつつも
待ち合わせの神学校目指して、重い荷物を背負って歩き出したんだっけな。
Aztec Camera
All I need is everthing
飛行機で大泣きして、ナポリまで戻ると、
美味しいご飯が待っていた。
毎日食卓を誰かと囲めることはとても幸せなことだけど、
頭だけはまだノルウェー最後の2日間から戻ってきていないのだ。
今、私が頑張れるのは大学を卒業することと、ラテン語をマスターすること。
ナルチストにいつまでも浸っている場合ではない。
パニーノを新聞紙で包んで、図書館でお勉強だ!