実は気が進まなかった、イタリアを旅行するなんて正直なところどうでもいい。
しかも今回は治安の悪さで悪名高いプーリア州である。
なぜ、こんなに行きたくない土地へと行くのか・・・、
それはベルゲンからやってくる7月のギムナジウムおじさんたちが
ギターの腕前を披露しにいらっしゃるからである。
日本だったら渋谷にクアトロなのに、なぜこんな名も知れぬ土地、
ロコロトンド(Locorotondo)へ?
演奏に?あんたらマット?おしゃれと見せかけておいてカフェ・ド・鬼?
これには、ローマに見に行くという選択肢もあったのに、
田舎の方で見ることを決定した私にも責任があるので
あまり嘆くべきではないが・・・怖かったんだよ。
Kings Of Convenience
7月のギムナジウムおじさん
プーリア州
最後の最後に一部屋だけ空いていた安ホテルに予約を入れたので野宿は逃れられたけど・・・・
イタリアのかかと部分に当たる地方で
私のホームタウンである左端のサレルノ市から土踏まず部分に向かって行き、
ここでまた乗り換えして目的地のロコロトンドへ。
プーリア州の南部を走る私鉄Sud-Est線は本数がなく、
3時間のトランジットを通してロコロトンドに着く。
ターラント-ロコロトンド間は1時間程、とっても清潔で冷房の効いた車内は南部とは思えない。
ターラント(Taranto)
ノルマン人の城、現在も軍事施設として使い続けられているため、海軍さんが沢山いらっしゃる
駅前から旧市街を通って新市街へ。
駅前と旧市街は危険な香り、ナポリで育んだ危険センサーが大作動、
海の水はサルデーニャの海並みに綺麗な緑色なのに
旧市街の雰囲気の悪さはナポリでも悪名高いサニタ地区よりもっと汚くて柄が悪い、
ゴキブリの死骸を沢山見た上、臭覚が異常に鈍感な私でさえ悪臭を感じた。
旧市街の終わりに現れるのはギリシャ時代の神殿跡とノルマン人の城だ。
橋を渡るとモダンな新市街へと出る。
新市街はサレルノとほとんど変わらず、特に面白みを感じない。
ノルマン人のお城はアラゴン城と呼ばれ、一日4回のガイド付きツアーが行われている様子。
ガイドするのは勿論、こちらに所属の海軍さんである。
3時間のトランジットとはいえ、旧市街を抜けて駅に戻るまで30分ほど掛かるので
今回はパス。
ロコロトンド(Locorotondo)
ターラントからロコロトンドに向かう電車ではこういった形の伝統住宅"トゥルッロ"が見える。
点々と見える伝統住宅と焼けた森、千葉のピーナツ畑を思い出させるような赤い土、
恐怖を感じる上、興味ないなぁ・・・こんなこと言ったら南イタリアファンに怒られそうだ。
・・・正直な話、万年氷河とかフィヨルドのほうが見たいなぁ。
ロコロトンドに着き次第、電車から降りた乗客を捕まえて道を聞く。
3時間も炎天下の見知らぬ街を歩いたので、早くホテルで休みたかったのだ。
"付いておいで!"
と、親切な方を捕まえ、道すがら世間話。
プーリアに来てから、道を聞いた人に必ずされる2つの質問。
"イタリア生まれか?"
"カンパーニア州からいらっしゃったか?"
この2つの質問は私のイタリア語をほめて下さっている証だが、
だっさい南部訛りがあることまで言われるのはどうかな?
しかし、見た目が東洋人なのによくもまあ、こんなに世間話してくれるのかしら?
ホームタウンでは毛嫌いされて、店の店員が物を売ってくれないこともあれば、
道端で"尻軽外国人"と労務者風ファッションの私に向かって罵声をかけることもしばしば、
やっぱり、サレルノがまずい街なのかな?
一夜明けて、目が痛い白い街、ロコロトンド。
右側に見えるのがトゥルッロのモダン・バージョン。
コンサートの余韻が残る中、サイト・シーイングに励む私。
白い階段、雨雲が見える。
この後大雨が降ったに違いないが、私は降り出す前にターラントへと戻った。
人とのふれあい、私がサレルノに引っ越してからずっと避けてきたことだ。
Kings Of Convenience は私にヒューマニズムを戻すきっかけを与えてくれているのか?
それとも彼らの出身地、ベルゲン・マジックが働いているのか・・・。
旧市街の教会、中には中世スタイルの装飾があり、柱には2つの尾を持つ人魚など
どこかで見たような典型的な様式に興味を抱いたのだが、
脳みそは違うところに行っていたため、写真はあまり撮らなかった。
はっきりとした影でお分かりのように日差しが強くて、
視神経だけノルマン人の私には目に痛い。
マルティーナ・フランカ(Marthina franca)
旧市街の広場、カプリみたい。
電車の本数が極端に少ないロコロトンドを後にし、乗り換え駅、マルティーナ・フランカで
ターラント行きの電車待ち2時間、駅から旧市街までかなりの距離があるのだが、
2時間もあれば見て回れるくらい小さい見所の旧市街。
プーリアバロック様式の街だが、白い家に白い道、磨かれた大理石づくしの旧市街は
とにかく目が痛い。充血して涙を流しながら、昨晩のベルゲン星人との遭遇に薄ら笑いを浮かべながら
バロックの町を闊歩するのだが、誰も私を避けたりしない。
なぜ?
ターラントへ戻った後もほとんどの時間を考古学博物館で潰す。
道すがらの人がなぜか、私と世間話をしようとすることが不思議でたまらなかった。
プーリアの人はそういう気質なのか?
この日は雨が降り出す前の蒸し暑い日だった。
不快度指数は高いはずなのに、この清清しい感じは何?
私には謎だらけのときめき一泊二日であった。
そういえば、旅行中に何食べたっけ?
バナナ2本とチーズときゅうりの自作サンドイッチ・・・だけ?
この空腹感の無さはまさしく・・・
ベルゲンの魔法の延長だ!