ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

ノルウェー映画の夜

勉強が終わると空しい気分になるのでよく映画を見るようになった。
昔はかったるくておとなしく見てられなかったんだけど年のせいかな?
テレビではイタリアの安っぽい映画やアメリカの商業映画を良く見る、
結末が見えていてたくさんの犠牲者を尻目に主人公だけがハッピーに終わるやつです。
ノルウェー映画は社会性が反映されていて、
その感覚が今の自分にマッチするので良く見るようになった。
20本ほどは見ただろうか?
その中でもとりわけ紹介したいものをラインナップしてみた。

 

  Elling

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適応障害のエリングがオスロのアパ-トで,初めての自立生活をすることになった。
今まで普通の生活をしたことのない彼にとって電話に出ることや外で買い物をする
といったことは不安だらけであった、
そんな彼も詩を書くということを通して少しづつて適応していく。
正直、こんなに人生うまくいくのだろうか?と突っ込みを入れてしまうが、
哲学と理論だけで生きてきたおじさんエッリングの変人具合や
そんな彼を親友としたって、
すべてを受け入れる彼のルームメイトの不思議な友情、
ノルウェー政府の社会福祉国家具合にはため息が出るほど美徳を感じる。
働き盛りの男二人が適応障害というだけでオスロでも裕福層が住む地区に
アパートと生活費を与えてしまうのだから国家は弱者の味方である。

 

  ユングヴェを愛した男(Mannnen Som Elsket Yngve)

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舞台は89年、ベルリンの壁が崩壊し、世界の変動を感じる主人公ヤーレに同じ音楽を愛する友達と最高のガールフレンドが出来た。
そんな日々を送っていた矢先、
転校してきたユングヴェにより彼の世界観は変わっていく、
全く共通点のない彼と会うことが止められないヤーレは
少しずつ受け入れがたいユングヴェへの感情を隠せなくなってくる。
ノルウェーボーイズラブ
使われている音楽が大好きなストーンローゼス、ジーザス・アンド・メリージェーンといったものだったり、
西ノルウェー、スタバンゲルの美しい背景、
小物使いに至るまで時代設定とシーンの撮り方などとても凝っている。
物語のテーマとあっていないのは配役であろう、
ボーイズラブなのにユングヴェの身長が2メートルもあるかと思われる大男なことや
ヤーレの不潔そうなセーターにはモーリスなどの美的XX映画ファンには痛いな・・・。

 

  Reprise

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ノルウェーの大学生ってこんな感じ?
作家になりたい2人の若者の青春ストーリー・・・
エリックとフィリップには共通の憧れの作家がいる。
同じテーマで作品を書き、同じ日に投稿した二人。
フィリップの作品が採用されいち早く作家としてデビューするが、
憧れの彼女に対する執着が彼を精神病院へと追いやってしまう。
そんなフィリップをやさしくサポートする負け犬エリックの思いやりのあり方や
人生が感傷的過ぎるフィリップの躁鬱の描写、
美しすぎるのオスロの何気ない道・・・何かに期待している希望に満ちた青春時代から
日常の小さな幸せを見出す人生に気がつきつつある
後半のエリックによるモノローグは感動ものだ。

 

  Max Manus

 

第二次世界大戦下のオスロナチスドイツにより侵略されたノルウェー
救ったレシスタンスのリーダー、マックス・マヌースのお話。
ヨーロッパではナチスドイツに対するひどい描写を再現するのが好きなので
基本的にこの手の話は苦手だが、この作品は敵の非人間的行動より
政治的に弱い立場のものによる勇気ある行動が取り上げられているので嫌味ではない。
どんなに英雄でも人間だよなというのが印象だ。
ただ、オスロ駐在のドイツ軍ってちょっとぼけてないか?映画だから?
レシスタンスで主犯のマヌースがドイツ軍のオフィスで、
仲間の処刑リストいじってたり、
爆弾仕掛けに基地に入っていっても
偽造身分証明証で逃げ切ったあたりはドイツ軍の重大なミスだよね。
2回とも同じ上官に見られているのだからなおさらだ。
それとも自分のやっていることに良心が耐え切れず、わざと見逃したのか?

 

  ホルテンさんの冒険(O’Horten)

 

日本でも上映されたまじめなおじさんの人生が狂った瞬間を描くほのぼのとした映画だ。
一人暮らしで未婚、40年間国鉄に勤務した絵に描いたようなノルウェー人ホルテンさん、
勤務最終日に遅刻したことは人生で初めての体験であったのであろう、
仕事仲間に合わす顔がなくなった彼が今までにしたことのないハプニングに奮闘、
コミュニケーションがうまく取れないから逃げる、嘘をつく・・・、
気持ちがわかるからなんだか一緒に困ってしまうけど、
優しい気持ちになれるから好きな作品の一つ。景色も色使いもきれいだ。
ノルウェーではあまりヒットしなかったそうだ。
同じ監督の作品を2本ほど見たが、立ち直れなくなるほど暗かった。

 

  Cold lunch

 

 

一言ではくくれない難しい作品、
3人の主人公の持つ片付けられない問題を独特の視点で取り上げている。
クリステル演じるヘンニー・アクセルの女性的な仕草は,演技ではないと思われる。
人生とはうまく行かないものだ。十人十色とはこういうことを言うのだろうか、
他人との接触を避けて生きてきたレーニや
お馬鹿ちゃんな自分に気づきつつも何も出来ないハイディ、
ちょっとシニカルでかつポップな電気グルーヴの音楽みたいな一本、
おしゃれではない、少なくともゴダールとかジャック・タチの映画をそういうカテゴリーに入れるのなら、こっちはもうちょっと問題と向き合う主人公達のやるせない存在を
外側から撮りました、といった感じか?

 

***ノルウェー映画を3本程見てところで最初に気づくのが俳優の使いまわし。
英雄が銀行強盗の役やってたかと思うと今度は分けあり大学生と七変化する者、
また全く同じキャラクターばかりあてがわれる者、
人口が少ない国とはこういうことなんだろうな・・・。
鬱や社会に適応できない自分に悩む登場人物と美しく過ぎる背景にため息。
清潔感にあふれ、スカンジナビアンな家具から小物に至るまで、
ノルウェー映画は私にとって心のサプリメントです。