ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

ヤーレ・クリップ トリロジー

台風が近づいているみたいですが、原発は大丈夫なの?

3.11以降、何かとその心配ばかりしなければいけないのが、とっても悲しいです。


さて、同室の女の子からキーボードを打つ音がうるさいといわれてから、
こっそりブログを更新している私ですが、今日は久しぶりにノルウェー映画のレビューを。

ヤーレ・クリップという赤毛の若者を主人公に、
彼の人生を辿るように作品をつづっている
トーレ・レンベルグというノルウェー人作家、
80年代から90年代のノルウェーを題材にした彼の作品を
映画化したもので、去年までに3作出ています。

音楽好きな作家のおかげで、映画の中で懐かしい音楽も聞けます。


第一作目は89年が舞台。

 
イメージ 1Mannen som elsket Yngve(2008)

以前にもレビューを書いた作品ですが、もう一度。

音楽好きなアナーキー少年ヤーレは、高校生。
イギリスの音楽を聴き、同じ趣味仲間とバンドを組み、
ガールフレンドもいる。充実した毎日にそれなりに満足している彼だったが、ユングヴェに会ってから、少しずつ何かが変わっていく。
何の共通点もない彼に会いたい欲求を抑えられず
バンドの練習や友達との誘いまで断って、彼に会いに行くのだが、
自分の中のユングヴェに対する気持ちを誰かに知られることが
怖くなり、ひどい方法で彼を追い詰め自殺未遂にまで追い込んでしまう。
死にきれなかったユングヴェは精神病院に入院していたが、
妄想と現実が区別できなくなった彼を見て、ヤーレはひどく後悔する。

 
 
ちょっとだけボーイズラブな作品です。
ガールフレンドのカテリーナよりも、ユングヴェに対する恋心の表現がすっごく切ない。
18歳未満な彼らが年齢を偽ってライブを見に行こうとしたり、
ドラッグを買いに、バイヤーを探したり、みんなも一度は経験したような思い出を
見せてくれて、共感してしまいます。
 
イメージ 2放課後はたまり場で喫煙、飲酒、そして
反体制的な音楽を聴いて過ごす・・・
音楽はストーンローゼス、ジーザス&メリーチェーン、
ラーゲ・ロッケルス(ノルウェーのパンクバンド)などなど。
そんなヤーレがJapanのデビッド・シルヴィアンに会ったことを自慢し、テニスが趣味のいい子ちゃんに惹かれていくのは、引きつける異質な何かがあったのだろうな。
 
レコード、カセットテープ、ウォークマン
懐かしいアイテムもたくさん登場します。
 
 
 
イメージ 3
Jeg reiser alene(2011)
 
1997年、ヤーレは25歳、ベルゲン大学文学部に在籍し、
学友と楽しい毎日を送っていたが
ある日突然、ほとんど身に覚えのない娘を預かることになる。
授業のあとは、友達の家で飲んだり、クラブに出かけたり、
好きな女の子を口説くことに情熱を燃やしていた最中の出来事で
子供に合わせた生活をたった一週間送るということが
たまらなく煩わしかったのだが、周りの協力により
少しずつなじんでいく。
 
 
 
 
イメージ 4
“一人で旅行してます”というパネルを付けて現れるロッテちゃん。
 
前作を見てからだと、どうしても安っぽい。
ベルゲンの風景を97年に再現するのは無理があったのか、
2000年以降に整備された観光名所などは映さず、
ほとんどが大学周辺で撮られたものになっていた。
 
生意気な若者がパパになるという、典型的な話と展開には
全く共感できず、私が登場人物の一人だったら、社会福祉協議会
すぐさま通報していただろう。
 
母親がだれだったとか、ガールフレンドが身勝手とかいう前に
お前!高校時代に一人の男の人生を台無しにしてるんだぞ!!
反省しろって!!
 
時代設定においても、
女の子のジャージとジーパンのタイトスカートとスニーカーが
なんとなく時代を想像させるものの、
音楽はPulp、サンディーズのあまり遠くない記憶の音楽
その中でとても興味深かったのはスウェーデンのパンクバンド
Bubhundが使われていたこと!
日本ではあまり売れなかったけど、あの時代はライブ告知をスウェーデンで見かけたり、
タンバリンスタジオのコンピレーションアルバムには必ず入っていた
知る人ぞ知るバンドで、ノルウェーでも人気があったことを知りウレシイ限り。
 
 
 
 
イメージ 5
男性諸君を見ていても、あまり時代のアイテムを見ることができませんが、
ヤーレが着ているシャツは、当時いしだ壱成が着ていて
スマート読者は愛用していたとみられる古着風。
 
これがノルウェーで流行っていたかはわかりませんが、
日本では、こういうのに一万円近い金額を払って
着ているネオアコ少年が結構見られた。
あと、ヒステリックグラマーの擦り切れ寸前布地に
コカ・コーラって印刷されたシャツとかもあったな。
 
 
 
最後の一作がこちら。
 
イメージ 6Orheim kompani(2012)
 
1985年、ヤーレは中学生。
理想とする家庭を作りたいが故、厳しい父とそれに従う母親。
テレビを見る時間やソーダを飲む量まで決められていたが、
反抗期を迎えたヤーレは、悪友と反体制運動に加わったり、
男女平等を訴えるようになると、家事をすべて押し付ける父親と
それに従う母親に疑問を抱くようになる。
その後、アルコール依存症に陥る父親、
それをきっかけに離婚が成立し、
以後、ほとんど交流のなかった父親の死をきっかけに
当時を振り返る。
 
 
 
 
イメージ 7
典型的ないい家の息子、教育熱心なよい家族と
まわりから評判の良い一家が
どのように崩壊していくかを辿ったお話だけど、
パパのアルコール依存症は見ていて辛い。
外でいい顔をしていて、そのストレスを家庭で
発散するタイプだろうな・・・。
何かと理由を付けて火がついたように怒り出す、
暴力をふるうといったイメージが
母親の常にびくびくした様子から想像できる。
 
 
ある朝、いつもネクタイを締めて朝食をとる父親の姿がない。
元気のない母親の顔にはアザ、寝室に行くと酒を飲んで上機嫌の父親がいる・・・
ドアを開けたら、アルコールのにおいが立ち込めていて・・・
こんなおやじが家にいたら、殴られる前にどこかに逃げないといけない!
放課後をどこで過ごすか考えて、悩んでいるのに、翌朝、何事もなかったかのような父親、
何も言及しない母親・・・。
 
イメージ 8
一度は暴力に耐えられずに逃げた母親も
連れ戻され、やり直そうと旅行を計画するも父親ペースの父親だけが楽しい旅行。
耐え兼ねた母親はまた逃げ出します。
今度は離婚届けを残して・・・。
 
 
 
 
父の死後、久しぶりに訪問した家はまるで廃屋のような佇まい、
家族のいなくなった父親がすべてを放棄していたことが伺える。
母親のために作っていたウッドデッキもそのままになっていた。
家族を一つのチームとして人生を歩みたかったという願望と
それを実現できずに寂しい人生を送ってしまった父に同情するヤーレだが
これは男にしか理解できないか?
 
こっちは時代のアイテムがもっと楽しいです。
テレビの前でバンド・エイドの録音をするヤーレ、
レコードが買えないから、外部録音で記録するんですが
突然母親が話しかけるので、その声までテープに入ってしまいます。
音楽もQueenやドアーズ、フルハウスというかマドンナというか
懐かしいルックの女の子たちも見られます。
ノルウェーは80年代が似合うかも。
 
 
予告編・・・こうやって見るとドラマチック。“家族、家族”ってこだわりが見られます。