2年越しで興味のある一本を見つけたので、久しぶりにノルウェー映画のレビューを。
Himmelfall (Fallen sky)
http://www.youtube.com/embed/wh8521Dsa9o
あらすじ
クリスマスも近い精神病棟。
そこでケアを受けている主人公ライダルは、隕石の地球落下を心配し、
他人に対しても、おせっかいに近い責任感を感じている。
彼のおせっかいぶりは、同じ病院に入院しているユニにむけられていた。
恐怖と孤独から自殺の練習を日々行っている彼女だが、
楽しみにしていた家族と過ごすクリスマスを
ことごとく裏切られ、本格的な自殺の計画を練り始める。
帰宅準備をしたいたユニ、家族は面会に来ただけで、すぐに帰って行った。
みんながハッピーなはずのクリスマスなのに
ユニは本格的な自殺計画を実行に移すことにする、
そして、その計画に加担することになったライダル。
妻の浮気で自宅に帰ることを拒否するセラピストのヨハンネス(ズングリムックリのおっさん)。
そして、汚い方法で稼いだお金は、全て賭けにつぎ込んでしまったタクシードライバー。
苦いクリスマスになりそうな彼ら、ばらばらな想いは
最終的に繋がっていき、ハッピーな最後で締めくくる。
ライダルと認知症から攻撃的な面が強くなってしまった母親
独り言:
悪さをするものには天罰が下り、日頃良い心がけで生きているものは
思いがけない人物から、救いの手が差し伸べられるのだ。
度の行き過ぎた個性のある女の子に振り回される男という設定は
大島弓子の漫画のようでもあり、劇的でない閉めも
漫画を読んだときのような、日常の良かったことを味わって終わる。
家族であれ、友人であれ、通りすがりの人であれ、
誰かを大切にしたい気持ちは、ミラクルを起こすのだと思った。
リストカットで拘束されているユニから、自殺を手伝ってほしいと頼まれるライダル、
"今じゃなくても、いつか死ぬんだよ"と言ってなだめるシーンが印象的だった。
重いテーマながらもコミカルな描写が多く、楽しそうにも見えてくるから不思議。
ライダル役の俳優さんは、他にもサイコホラー作品で、
幻覚に悩まされる役をこなしている。
あと、ニューハーフの美容師役も!
精神病院モノでもう一本。
De Gales hus (The House Of Fools)
あらすじ
自殺に失敗したアイナが目を覚ましたのは、精神病院。
社会に適応できない、ちょっと危ない人たちに囲まれて、
少しずつ生きる欲求を取り戻していく主人公。
元気になり始めた頃、自分を担当しているセラピストが
アルコール依存症であり、定期的に長い休みを取り、
酔っ払っていることを知る。
患者で治療を受けているオーディンも同じだった。
元精神科医で、現在は治療を受ける側になっているが、
アイナにとっては、死にたい自分を一番理解してくている人物なのに、
死への欲求は誰よりも真剣で、何のそぶりも見せないまま
ある晩、こっそりと死にに行ってしまった。
死を目の当たりにしたアイナ、病院のセラピーグループでも交流が成功し、
死への憧れを持ちつつも、生きる意味を見出すことができたのだ。
病院近くにある死の沼、お散歩に行くアイナとセラピーメイト
独り言:
死に対する憧れと誰にもわかってもらえないスッキリしない何か、
果たしてセラピーに意味があるのだろうか?
何にもしたくない、自分だけが楽しくないアイナの他人と馴染めない具合と
余計なお世話しかできない担当職員。
精神病院でなくても、人生のいろいろな場面で
似たような感情を抱いた人も少なくないのではないだろうか?
誰にもわかってもらえない、自分だけの内面世界、
発狂しそうになるセラピストとの対話、
理想だけを押し付けてくる職員、
アイナの中でパニックが起こったときには、
それもそのはず、彼は本気で死を計画していたから。
オーディンの最後の日々は幸せそうにしか見えなかった。
本気で自殺する人は計画が邪魔されないよう、
死の匂いを決して匂わせないのだとか。
どれもノルウェー映画によく出てくるエレメント。
それだけ日常的で、関心の高いことなんだと思う。
うつうつな気持ちは少し高めな私も、たまにナルチストになって
自分の死を考えることがある。
ナポリではタブー視されているため、
滅多にそんな話題に触れることはないのだが、
少し前のお食事会で、招待客のデッタが
日本の自殺率の高さについて質問してきた。
本当の理由は統計を見なくては分からないので、
自分の見解のみを伝えておいた。
イタリアは日本や北欧諸国に比べて、自殺率が低い。
お年寄りたちはマリア様に守られているからだというが、
統計に表れない自殺が存在することも事実である。
自殺は恥といわれ、死んだことを隠したり、
死亡届でなく、失踪届けを提出したりするのだとか。
週末にこんな記事書いてすいません。