ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

困った映画趣味

テスト期間が終了し、勉強も続けているけど、
久しぶりに"朝時間"で生活し始めたので
朝の四時からノルウェー国営放送ラジオなんか聞いている。
 
分かる単語は時刻とベルゲンの渋滞情報ぐらいか?
取り上げられるのはスマトラ地震の話題や音楽レビューが多い気がする。
 
さて、久しぶりに映画の話を少し・・・
 
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About a boy
 
イギリス俳優、ヒュー・グラント主演。
感覚のズレと世間のつながりを上手に扱ったコメディ映画。
 
"結局人は一人"という思想から、人付き合いを避け、
なるべく面倒なことには関わらないように生きてきた主人公ウィルだったが、あるきっかけで知り合った小学生、マルクスにより、少しずつ人生が変わっていく。
 
 
ヒュー・グラントらしい嫌味っぽいお笑いセンスには笑わせられてしまった。
マルクスの妙な図々しさや、なぜかウィルに頼ってしまうところ、
結構ハードな学校生活も自殺未遂をした母親を困らせないため、
自分が大人になって乗り切る尊い子供具合・・・、
重い要素たっぷりなのに、面白おかしいモノローグで重い雰囲気を蹴飛ばし、
笑わせてくれるから素晴らしい。
全く嫌味を感じさせないラストは現実感があってかなり感動した。
 
この作品はヒュー・グラントファンの間では駄作に入るそうだ。
確かに劇的な最後でもないし、登場人物たちも精神的な社会階級が底辺?
社会から内緒でつまはじきにされているタイプの方たちばかり。
この映画は人とのつながりを謳っているお話だが、
正直なところ一人を楽しんでいるウィルは羨ましい。
 
 
 
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Billy Elliot
 
バレエダンサーに憧れるビリー、そんなモン女のすることだと
ボクシングを習わせていた炭鉱夫のパパとお兄さん。
ダンスに情熱を燃やすビリーに心を打たれた彼らは
次第に応援し始める。
 
時代は70年代のイギリス北西部?
妙にレトロな家具やストライキ中の炭鉱、
そんな地域から格式の高いロンドンのバレエ学校入学を目指す
ビリー・・・、周りの協力や家族の理解、そして主人公の情熱に
ドカベン山田太郎、高校入学のエピソード的な感動を覚えた。
 
The Jam の"Town called Malice"が使われていたり、
音楽のセンスも相まって、何度見ても泣かされる。
 
Kings of convenienceの"I'd rather dance "のビデオでも
一部が使われている。アートワークに妙なこだわりがあるアーランドも
この映画を見たのね。
 
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ウディ・アレンのバナナ
 
冴えなくてお金もない、セールスポイントなしの
主人公は失恋をきっかけにある中米の独裁国家
革命を起こそうと奮起する・・・という話に織り込まれた
70年代のアメリカを風刺した作品。
 
高校生の頃、深夜に放送されたものを偶然見てから
気になっていたのだが、ニューヨークを舞台にした前半部分は
インテリアも衣装も本物の70年代なので、
かなり興味深い。
もてない具合の表現も現代とあまり変わらず、
古典的なギャグもすごく新鮮に感じた。
 
 
この70年代の世界は未だにナポリ東洋大学で行われている。
そういう雰囲気を味わいたいがゆえに、学生パーティなんかに顔を出したりしてしまっていたことがあった。
 
 
 
 
 
私が妙に好きなエピソードの一つ、ポルノ雑誌を買うウディ・アレン。
女性の目を気にして、インテリな雑誌に混ぜてレジに持っていくところ。
 
 
 
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第二次世界大戦中のフランスを舞台にした
少年たちの寄宿舎疎開生活のノンフィクション。
 
ドイツ軍に占領されつつあったフランスで、
修道院付属の学校に疎開させられている主人公ジュリアンと
謎めいた転校生、ジャン・ポネのお話。
萩尾望都作"トーマの心臓"の世界を思い出させるような寄宿舎と
ユダヤ人迫害を扱ったデリケートな心理描写が涙を誘う作品。
  
最後に子供たちがドイツ軍にした必死の抵抗、
素晴らしかった!
 
 
番外編として書かせていただきたい作品が少々・・・。
日本では発売されていないであろう作品なので、
時間のある方だけ読み進めていただきたい。
 
ノルウェー映画、エリング3部作である。
 
 
 
 
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Elling
 
母親と2人暮らし、世の中から隔離されて生きてきたエリング。
母の死により、社会適応のための更生施設で二年に渡るカウンセリングを受け、
その後、オスロのアパートで自立生活を始める。
パニック障害、虚言癖、鬱、外に買い物に出るどころか、
電話にも出られないおじさん主人公は詩を書くことで
少しずつ、世間とのつながりを持ち始める。
 
存在することすら恐怖を感じるエリング、
同居人で適応障害のシェールビアとの虚しい友情、
本人たちにとっては生きること自体が重い課題であり、
悩んでいるのに、この虚しさには笑いすら誘うから素晴らしい。
 
活字の理論だけで生きてきたエリングと
食欲と性欲で生きているシェールビア、
この二人の小さな進歩に頑張れ!って応援したくなる。
 
 
 
 
こちらの映像は電話に出れないエリングを社会福祉協会の
フランクが訓練しているところ。
外に出るのが怖いので、フランクに理論で正当化しようとしている。
ちなみにエリングが気に入って聞いているラジオNRKは
私が毎朝聞いているやつ。
 
 
 
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Mors Elling (ママのエリング)
 
まだ、エリングの母親が生きていた頃、
2人で行ったスペイン旅行のお話。
 
こちらはちょっと未完成?
 
ママに言い寄る男に嫉妬したり、旅行をかたくなに嫌がってる割には
自分も秘密の恋人を作ろうをする意気込み・・・
素晴らしいかもしれないが、変人具合に欠け、エリングらしくない。
この作品はエリングの目を通した
ママの幸せな最後の数日間を書きたかったのかもしれない。
 
 
 
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Elsk meg i morgen 
(Love me tomorrow)
 
適応障害で同居人だったシェールビアは
同じ建物に住む女性と結婚し、パートタイムで仕事をするという進歩があった。
一方、エリングはパートナーを持つことが義務のような社会に
不満を覚え、鬱症状がひどくなりつつあった。
 
ある日、ホットドック屋台の女性に一目ぼれしたエリングは
得意の虚言癖で彼女に近づこうとする。
今まで恋愛をしたことがなかった彼には予測できない、
カバーできない事態が発生し、極度の嫉妬に悩まされる。
 
 
 
世の中になじめない、プライドが高いから嘘で固める、
ノルウェー人の日常に潜む暗い部分を表に出した作品であると、
作者は語っていた。
 
理論詰めのエリングと知的なこととは一切無縁なシェールビア、
こんな二人の虚しくも強い絆と意外とあっさりしている彼らの適応障害
誰もが黙っているけど、実は心のうちに秘めている叫びは
彼らによって代弁されているとも言えるかな?
 
見覚えのあるオスロの風景や素敵な北欧風のアパート、
重みのある言葉・・・。
 
 
 
"人生は尊い、思うように行かなくとも・・・。"
 
3作全てを通して, 撮影の行われた場所が
カミッラのアパート近所で見覚えがあったことや
ところどころに盛り込まれた危険な冗談にも
かなり笑わせられた。
 
オスカー外国語映画部門を受賞している割には
あまり表に出ないが、
その内日本語の字幕で日本の皆さんの下に配信して欲しい。
 
 
 私が心を打たれる作品を挙げると、どうも辛い状況を笑い飛ばす、
面白い方向に持っていこうとする写し方にあるようだ。
周りから見たら滑稽だけど、本人たちは精一杯生きてます・・・
といった偏りのある映画趣味、
勿論、何も考えずに見れる商業映画も好きだけど
やっぱり何度でも見てしまうのは上に挙げた作品ばかりだな。