誰でも聞きたがっているかは知らないが、
誰もが勘違いしがちな考古学にまつわる話である。
真面目な記事ではないので、アホに割く時間がない方は
パスした方がいいかもしれない。
1、魅惑の学問?
考古学を主題にした大衆商業映画をご存知だろうか?
インディ・ジョーンズやトンブライダーなど、目的意識のはっきりした
考古学ハンターたちが遺跡で大活躍するのだが、
実際の考古学者は文書館や図書館、研究室に篭っていることの方が多い。
夏季には遺跡へ赴くのだが、実際に掘るのは雇われている土方の方や
奨学金や単位という武器で脅された学生である。
宝の地図を手に入れることはほとんど不可能で、
遺跡の手がかりは古代の文学作品や土地にまつわる伝承などから
位置を割り出していく方法がスタンダードである。
お金のある研究グループは航空写真で、その存在をもっと明らかにすることができる。
こちら、田んぼに浮かび上がった
土の下の建築物跡である。
航空写真はミステリーサークルを撮るだけに
使われるのではない。
実際の発掘で宝物が出てくることは少なく、
私たちが発掘によってハントするのは"全て"である。
出て来たものをすべてまとめて、当時の文献や同年代の他の遺跡から発掘された物を
対比しながら、発掘した土地の層に対して年代設定を行う。
ついでに・・・、
年代設定は出てきたもののスタイルや素材を元に
大体の年代を割りだす、その後、地層の前後の品物と対比して、
地層自体に年代を付けていくと、それ以降と以前の地層の年代を設定するのは
かなり簡単になる。
それをもっと裏付けるために科学年代測定法を利用するのだが
全ての年代が合致することは稀ともいえる。
2、発掘とは?
現場には教授にアシスタント、測量士、クーラーの聴いた小屋で監視に当たる遺跡の管理人と
単位のために総動員された学生たちがいる。
炎天下、影なし、砂埃の舞う遺跡にて、朝の7時半から夕方の5時まで、
砂いじりと昆虫との接触にいそしんでいるのだが、
教授の無関心さに休憩とおやつの時間がやたらと長い。
時間通りにくるのは私くらいなもので、
ほとんどは1時間の遅刻。
ラジオ体操と朝の集会後、やっと始まる作業、時計は9時をまわっている。
なぜかしし座の多い真夏の発掘作業。
誕生日や聖人記念日にはお菓子が振舞われる。
ワインにシャンパン、持ち寄りお菓子で
一休み一休み・・・。
この日はナポリ名物のサバラン、
ババが振舞われた。
博士号課程のお姉さまのお仕事は
昼休みのあとに電気コーヒー機で
コーヒーを入れてみんなに持っていくこと、彼女のあだ名は"コーヒー女神"。
"さぼるな!"
カメラいじってるのが発掘担当の教授、
お菓子に釣られて休憩時間の延長も多めに見てくれる。
見ての通り、薄着の女性群と冴えない男子生徒たち、間違えて考古学取っちゃったような女の子たちは化粧に見せ下着で発掘に、見せる相手はいないのに・・・。
午後はほとんど噂話とお菓子休憩で時間が過ぎていく、
4時になると遺跡の管理人が予定通りの勤務終了時間(30分前)になるので、
作業をやめるように言って歩く。
おまけ: ババのアップ写真
3、女性は虫が怖くて近づけない?
まだ誰も手を付けていない遺跡は草が生い茂っている、
何百年もの間ほったらかしにされているのだから当然なのだが、
草むしりの作業や掘ったあとの土台には虫や爬虫類がいらっしゃる。
それを怖がっている女学生に中世建築学教授のペドゥートが一喝。
"遺跡に来るな!"
4、考古学者は嘘を見抜く?
歴史的資料として高評価を得ている文献。
いくつかの種類に分けられるのだが、この内容に嘘を見抜くもの彼らのお仕事。
そのように知られている、そういうセオリーで成り立っているという
事柄をひっくり返して、疑いをかける、その疑いに新しい仮説を立てて学会を湧かせる。
しかし、私生活には全く活用していない。
試験時には、生徒の泣き落とし作戦に簡単に引っかかる。
この泣き落とし対策が一番効きやすいのがこの分野であるが、
司祭さんなどの聖職者には厳しい点数を付けると言う
よくわからない傾向がある。
5、フェチ?
想像力は必要不可欠である。
何じゃこりゃ?という発掘品に対して、なんとかその意味を見出そうとする
健気な努力が通常の数倍も必要とされる。
こちらの写真全てに意味があり、その意味探しをするのが考古学者である。
つぼの首に模られたヘラ(上右)、テラコッタに装飾されたメデゥーサ(下中央上)、
バイキング時代の装飾品(下中央下)、ノルマン人による城の土台跡(下右)。
こういった分けのわからない物に対し、その必要性や機能していたときの姿を
再現するのもお仕事。
6、研究には良い学者や有名な大学に通う必要があるか?
若い芽コネなしには摘み取られる可能性大。
7、クールな仮面の下には何が起きている?
ポーカーフェイスは考古学者に必要不可欠な要素である。
ドリーミーおやじの集会ともいえる学会では
とんでもない仮説を唱える者やそれに対して常に無表情でいる他の学者たち。
お葬式で思い出し笑いをしたくなるような危ない雰囲気が
常に付きまとう。
コンフェレンスにフォーラムでは
それを乗り切り、無表情のままメモするだけの度量が試される。
そこで笑いが漏れたらドミノ状に伝染し、
会場全体がまとまらなくなり、急遽、休憩時間に突入することとなる。
なかには歴史上の人物に対し、妄信的な学者も見られるため、
少しの意見が、反感を買うばかりか、その意見に対して
質問攻めに遭うなど、爆弾を抱えた学会を乗り切るだけの体力と忍耐、
そしてポーカーフェイスが欠かせない。