ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

バロック的って何のこと?

バロックという表現を良く使うのだけど、それがどういう形容詞として使われているか
美術史や音楽史を勉強した人でなければ、あまり想像が湧かないと思うので
少しだけ私の中のバロック感を書かせていただこうと思う。
 
バロック文化は17~18世紀にヨーロッパで花開き、
豊かな表現力と華やかな装飾で見るものを魅了している。
 
彫刻家ではカノーヴァ、ファンツァーゴ、ベルニーニ
画家ではカラヴァッチョ、レンブラントエル・グレコ
建築では彫刻家と被るので、代表的な建物を・・・
 
ローマに行ったことのある方なら、ご存知ののバチカン市国、トレビの泉、
ナヴォーナ広場やスペイン階段などが、その代表的作品なのだけど・・・
 
免罪符売上金で建てたサン・ピエトロ大寺院(左)、学生アパートになっているナポリのスピネッリ館(右)
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・・・というのが大まかな輪郭で、私的には
 
"隙間のないやりすぎ装飾に原色&金色をあしらった、
小学生がすきそうな色合いと
曲線を生かした劇的な大げさ表現&立体版騙し絵効果"
 
 
騙し絵代表例
イメージ 7こちらはローマのレプブリカ広場にある
ミケランジェロ設計で名高い
サンタンジェロ・エ・マルティリ寺院。
祭壇から壁の大理石から全て手描きです。
ローマ時代から使われてきた"トロンプ・ルイユ"で
私も相当近くに行くまでは全く気が付かないほど
精密に描かれています。
 
 
 
 
 
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ローマのポポロ広場にある双子教会。
こちらも視覚による錯覚を楽しむ為に設計されている。
真ん中に立つエジプトから強奪した石の柱を中心に
左右対称に見えるように、どちらかの教会クーポラは
楕円形しているそうだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
ナポリはローマやパレルモに負けず劣らずバロック文化が花開き、
現在もその当時を臭わせる(匂わせるではない)建築物や文化が色濃く残っている。
 
私のイタリアはナポリが全てであり、イタリアといえば、バロック文化を連想してしまう。
つまり、ナポリらしいことをバロックと表現するのだけど、
それは歴史的な様式にとらわれることなく、現在における芸術作品、映画、人の振る舞いまでもを
この言葉を用いて表現させていただいている。
 
さて、本題に入ろう。
 
ナポリにおけるバロックらしさとは?
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第一に渦巻きである。
赤丸で囲った部分には、カーブのきれいな
渦巻きモチーフが使われている。
そして曲線を利用し、張り出された立体装飾と
どこか暑苦しい表現の建築様式・・・
ナポリバロック文化はスペインの影響が
色濃く出ていることがそう思わせるのだと思う。
 
この教会はVia Paladinoにある
バロック様式教会なのだけど、
廃寺を経て現在ルーメニアン正教会
貸し出されている
(持ち主は勿論カトリック教会ナポリ司教だろう)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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こちらの彫刻はナポリの彫刻家ファンツァーゴ(Fanzago)の作品。
赤い矢印で示した、よく言えば躍動感、
悪く言えばヨガ的な体のひねりを精一杯表現しました的作品、
衣服のしわも手伝って、感情の波を曲線一杯に詰め込んだような
静止したドラマチックである。
 
 
また、エクセドラ部分のカラフルな大理石による
はめ込み装飾もバロック文化の一つ、
教会に入って床なり、祭壇なり、このような装飾が見られるのなら
そこはバロック時代に作られたと考えられる。
 
 
 
 
 
 
 
ナポリに住んでいたせいか、その文化に身をおくということは
自然にバロックさを理解するベースとなり、
それを基点として他の建築様式に対する理解を重ねていった。
 
 
 
おまけ、暇な人へ
駆け足西洋美術建築史 初代キリスト教~ネオ・クラシック様式
 
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初代キリスト教様式(5~10世紀)
サン・ヴィターレ教会(ラヴェンナ)
 
こちらの教会はビザンチン様式とも呼ばれる
円形プラン、どこか東方の香りを漂わせる。
初代キリスト教とは、ローマ土着信仰からキリスト教にスイッチする際、まだカトリックとかオーソドックスとか
細かい決め事が行われていなかった頃に集会場として典礼をおこなっていたところ。
 
 
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ロマネスク様式(10~11世紀)
モデナのドゥオーモ(モデナ)
 
地方性豊かなこの様式はローマ美術への回帰がキーワード、
シンプルさの中に見える注文主(地方権力者などのスポンサー)の
趣味を混ぜこんだ宗教施設が次々と建てられた。
 
北イタリアを中心としたゲルマン色の濃いフランク・ジャーマンロマネスク、
中部イタリアからアドリア海側に広がったロンゴバルドロマネスク
南では伝統的な建築が続けられた(ロマネスクと呼ばれるような建築物はなく、年代的にそう呼ばれている、サレルノのドゥオーモはロマネスク様式といわれるが、アラブ・ノルマン様式が正しい、ノルマン人のアラブ趣味で設計されている)。
一度消滅してしまった石積み天井技術が復活し、
荘厳な雰囲気が復活したとか。
 
 
 
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こちらもロマネスクで片付けるのだろうか?
ノルウェーの木造教会である。
 
年代的にはそのくくりに入ることができるのだが、
どう見ても同じ様式で片付けるのは残念なような。
 
 
 
 
 
 
 
 
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ゴシック様式(11~13世紀)
ケルン大聖堂(ケルン、ドイツ)
 
ゴシック様式はロマネスクと時代が被る。
ロマネスクはイタリア語で"Romanico"つまり、ローマ的という表現、
ゴシックは"Gotico"、ゴート人的という意味だが、ゲルマン的な要素を見せるこの様式は長い美術史上において、古代ギリシャやローマから離れた
数少ないゲルマン文化の表現である。
 
見分けるのはいたって簡単。
とんがり具合である、点を突き刺すようなとんがった表現と
長くて先のとがったアーチを支える付け柱の存在、
さらには柱の間隔が狭くて、ステンドグラスで明るい教会が標語である。
 
 
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ルネサンス様式(14~16世紀)
コリリアーノ館(ナポリ)
 
現在ナポリ東洋大学校舎となっている赤い建物。
見えにくいけど、窓の上のアーチ装飾が丸いものと尖ったものと
交互に並べられ、装飾柱のオーダーもドーリア、コリント、イオニア式と階によって並び替えられている。
 
時代的にスペイン統治で敵も減ったので
芸術の余裕が出てきた状態である。
窓も大きく取られているし、
装飾にはシンプルながらも遊び心が見られる。
 
 
 
バロック様式を挟んで・・・
 
 
 
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ロココ様式(17世紀末~18世紀)
ドメニクス・ジンメルマン教会(ビース、ドイツ)
 
バロック様式をもっと乙女チックにした様式で
"御フランスの"という表現がぴったり、
ベルサイユのバラといったらこの様式を差す。
 
パステルカラーに明るい色使い、
ナポリではロココを形容詞に使う場合、
ほとんどが、悪趣味な豪華さを意味することが多い。
 
アントニオのママを控えめにバロックおばさんと表現しているけど
どちらかといえば、ロココ的。
寝室にお邪魔した際、驚きピンクのサテンベッドカバーに
ハートのクッション、天使の置物で飾られた壁・・・。
 
 
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ネオ・クラシック様式(18~19世紀)
サンタ・パオラ聖堂(ナポリ)
 
ご覧の通り、古代ギリシャ神殿のような正面と
パンテオンのようなドーム部分、
古代回帰ブームの再々来・・・結局西洋美術史
古代ギリシャからの文化を
何度もリヴァイヴァルしているわけです。
ベルリンのシンボルである門や
ロンドンのナショナルギャラリーなんかも
この様式に入る。
 
 
そして・・・ここからアールヌーボー(ドイツ語でユーゲンスタイル、イタリア語でリバティー)へ続く。
バロック美術との違い、お分かりいただけたでしょうか?
 
もっとバロックを手軽に知りたい方、私のおススメはこちら
 
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バロック時代に生きたオペラ歌手の映画
(Farinelli Il Castrato)
 
変声期前に虚勢したオペラ歌手の話、
多分、フランス人監督だったかな?
ファリネッリとその兄がナポリ出身だった気がする。