ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

アカデミック木曜日

オスロ大学の考古学部に籍を置いているカミッラから、石器づくりのお誘いがあったので、ラボに行ってきました。

 

オスロ大学考古学部の校舎

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大学は中心街から離れたブリンダンと呼ばれるところにあり、考古学部は学食や図書館からやや離れたところにあった。

カミッラはカザフスタンに興味のある地上絵があり、その絵の謎解きをしたくて大学で考古学を勉強しようと入学したらしく、度々私にメールでカザフスタンの地上絵について、どう思うか資料を添付して送ってくることがあった。

確かに私は考古学を勉強していたが、専門は石器時代よりずっとあとの中世、それも南イタリアなので、必須科目としてかろうじて古代を少々知っている程度、まだ言葉がなかった時代の巨大な地上絵は、地下に建造物の土台が浮き出たクロップサインか、宇宙人の仕業くらいしか思い浮かばない。

 

校舎内の廊下

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講義を行う大教室と違い、ここは学部のラボや研究室、事務室などがあるので、生徒がたむろ出来るようなスペースはないが、トイレだけでなくシャワー室まであった。

ノルウェーの他の大学や違う学部を覗いたことが何度かあるが、ロッカーやトイレの横にシャワー室があって、利用している人をみたこともあった。

スポーティな人は登校時にジョギングでもして汗をかいたり、通学路が森の人は転んで泥だらけになっても、リフレッシュしてから授業を受けられる親切設計なんだろうか?

 

ラボに置いてあった石

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イタリアではこういう風景を大学のラボだけでなく、遺跡でもよく見かけた。

出土した特に“重要でないもの”、瓦礫や復元の必要がなさそうな陶器のかけらがほとんど、でも写真のものは実習に使う石器を作るために必要な石です。

 

石器づくりに使った石置き場

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よく見るとコーヒーの蓋が混じっているので、ゴミ箱だったんじゃないかと思いますが、私はこの大学の生徒ではないので、使い古しを使わせてもらえれば、それでOKです。

石器は黒い石を白い石で割って作ります。

黒曜石ってやつだと思いますが、当時の職人さんは熟練工になるまで最短2か月程度だったというので、私も頑張れば短期間で学べるかもしれません・・・が、腕がしびれて上手に割れない。

 

やっとそれらしきスライスが切り出せた

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小さいですが、これは矢じりに使えるサイズとのこと。

ここから更に白い石をやすり代わりに形と刃先を整えていきます。

ある程度のところまでは頑張りましたが、使わない矢じりを研磨するほど心と筋肉に余裕があるわけもなく、学食へコーヒー休憩に行こうということになりました。

 

図書館

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オスロ大学は初めてではないが、図書館も学食も本当に立派で、毎回驚く。

これで学費が無料、管理費のみの支払いで済む上、保育園までついているなんて誰だって一度は大学生になりたくなる。

時刻は午後3時だったが、大学の学食もカフェも店じまいをしていたので、カフェイン欠乏のまま図書館で過ごすことにした。

 

図書館ロビー

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上にはちょっとした展示室がいくつかあり、地下には駐車場かと思うくらい広いスペースにロッカールームのような広いトイレがある。

お菓子とコーヒーの自販機もあるが、スーパーで買った方が安いし、コーヒーも少ししか出てこないので、魅力に欠ける。

私は図書館のレファレンスコーナ―の先あったパソコンを使って、しばらくカミッラから依頼されていたロンゴバルド族の資料をひたすらチェックして保存することにした。

パソコンやスマホの普及率が高くなったせいか込み合うこともなく、時間制限もないのでゆっくりと打ち込めるけど、静かで穏やかな照明、心地よい温度とキーボードを打つ音が心地良いが、ネットを始めるとトイレに行きたくなるあるあるで、一度席を立った。

カミッラは一人で例のオリエンテーリングのチェックポイントを探しに行った。

雨に打たれながら、バスを使ってでも見つけたいものなのか、毎回疑問に思う。

 

ロビーにあった古代の碑文、本物だろうか?

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カミッラが戻ったので、お互いコーヒーを飲みたいということで、大学を後にし、最近お気に入りだというイタリアン・カフェに行くことになった。

 

キルケ通りにあるイタリア風カフェ

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イタリア風というか、ピザとエスプレッソの店です。
内装が爽やかな色なのに、椅子の形状や黒をアクセントカラーにしているためか、60年代のイタリア風な雰囲気がかすかにします。

ノルウェーでは当たりまえのワンオペ経営なので、丁度夕食どきに来てしまった私たちはエスプレッソ2杯を受け取るまで随分時間が掛かってしまった。

観光客っぽい2家族がピザを注文するだけで、手一杯になってしまうお店、時間がないなら他に行きなさいという余裕が、客を待たせてはいけないと刷り込まれている私にはうらやましかった。

この地域はカミッラが以前通っていた学校と、そこのサークル活動で使ったマイヨルストア教会があり、図書館もスーパーもどこにあるのか把握しているので、もし私がノルウェーに住むなら、この地域を選びたいといつも思う。

 

聖ドメニクス教会

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早めに教会に着いてミサに参加。

夕方になって天気が回復してきたのか、外が明るい。

写真を撮っていたら、カメラ好きのオッサンが近寄ってきて、私の一眼レフに付いているレンズについて聞いてきた。

オッサンはフィルムカメラ派なので、デジタルの映すシャープな画像が現像したときに残念に感じるのだとか言っていた。

翌日は自分もカメラを持ってくるので見せてくれるとか話してくれたけど、私たちは多分、聖オラフ教会のミサに行くので会うのは難しいだろうと言って別れた。

 

夕食はヴィーガンケバブ

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フライドポテトトッピングしたので、千円近くなってしまったが、大豆ミートケバブヴィーガンソースを使った正真正銘のヴィーガンメニューが本当に嬉しかったです。

片手で持つのは難しいくらい、すごい量なので、大満足です!

カミッラはファラフェルのラップサンドで、いつもLサイズを頼んでいますが、ファラフェル団子が2個多いだけで150円くらい高めで、ピタではなく、ラップサンドなのでエクストラで更に100円くらい高くなります。

食べ終わった後、カミッラがナポリで買ったと思われるエドアルド・デ・フィリッポというナポリ喜劇のDVDを鑑賞。

初めてみたフィリッポの作品はナポリをよく知らない人が見たら、何が面白いのかわからないような、かなり濃い舞台作品で久しぶりのナポリ方言にワクワクしながら見ましたが、9時前に見始めて、終わったのは12時をまわっていたため、後半は寝る準備をしながら見た。

オスロ大学に始まり、ノルウェーとイタリアの文化を行き来した一日は穏やかで少し退屈な感じ。

この感覚、イタリアにいたときに年に一度ノルウェーに遊びに行った際、惰性で過ごしていた何でもない日々、まるでオスロの住人になったかのように過ごした日々を思い出して、なんだか懐かしかった。

あの頃は、カミッラもまだ神学生で授業に出ている間、私は校内の図書館や学食で、新聞を読んだり、コーヒーを飲んだり、地下にある台所で簡単な食事を用意して食べたり、顔見知りと会えば、今よりずっと上手だった英語やノルウェー語で会話したり、授業が終わった後のカミッラと近所を散歩してミサに行って、夕食後はおしゃべりをして過ごす一日が多かった。

そんな日が妙に懐かしく感じるのは、私のライフスタイルが変わってしまったからなんだと思うと、時間の経過が残酷に感じたりします。