ナポリの小枝とノルウェーの切り株

ノルウェー、ヴィーガン、猫とおそ松さん

バス代をケチった先にあるもの 前編

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ペンテコステの翌日、振替休日らしく月曜日なのにお店は閉まっている。

到着してからの二日間は、教会行事と台所での作業を手伝っただけで、恒例の目的のない長い散歩や野外キャンプのようなことはせずに済んでいたので、適度に休めたおかげか眩暈や寝不足からくる倦怠感は無くなっていた。

でも、まだ必要な食品が買えていない。

天気の良い休みの日なんで、お外には沢山の人がいて、私たちもレーネ・マリーを訪ねて、恐ろしい距離を歩こうとしている。

レーネ・マリーとはカミッラが通っていた教会関係者養成専門学校時代からの友達で、私も面識のあるリチャルドの元カノさんとのこと。

まだイタリアにいた頃から彼女の名前は聞いていたけど、待ち合わせが上手くいかなくて中々会うことが出来なかったのだが、今回も似たような感じで待ち合わせに現れず、お家に直接行くこととなったのである。

レーネ・マリーはBrekke(ブレッケ)という地域に住んでいるらしい。

それってどこですか?

グーグルマップでは徒歩で1時間18分、約6キロと表示されていたので、思ったより近くて安心した・・・というのは、以前片道3時間くらいかけて遠くの教会までベトナム人のミサを聞きに行ったことがあったからです。

 行くときめたら、まずはSagene(サグネ)地区を目指します。

こちらはカミッラのアパートの裏手の道をひたすら歩くと着く、垢抜けない住宅街で、一枚目の写真の教会を中心にカフェやケバブ屋などが数軒あって、のんびりした雰囲気と薄暗い店が軒を連ねる20年前のオスロ的雰囲気。

 

Sageneの街

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こういう、伝統的な古い建物とガラス張りのバルコニーが近代的な集合住宅があります。

更に歩いて次に着くのがNydalen(ニダーレン)という、割と新しい地域で、アーケルシェルバ川のほとりにあるおしゃれなショッピングセンターやウォーターフロントのカフェもあり、住宅街もデザイナーズマンション的なアートを感じさせる街です。

 

Nydalenの住宅街

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右に見える建物は木を外壁に使っていますが、灰色になった木材が何だかおしゃれ。

ところで、今回はどうしてレーネ・マリーとの待ち合わせが上手くいかなかったのでしょうか?

それはカミッラとの待ち合わせ場所が曖昧だったからです。

“この前あなたが降りたバス停で待ってる”という風にどこのバス停か、はっきりと明記しなかったことで、“この前”のバス停がどこなのか、お互いに違うバス停を思い浮かべて、会えなかったようです。

会えないなら携帯電話があるんだから電話すればいいと思いますが、レーネ・マリーは電話の契約はしていないので、自宅のネットのみで連絡を取り合う方法を選んでいるようです。

まあ、以前から体調不良や天候不順で外出を断ることが多かったので、あまり家から出たくないのだろうと思います。

 

この辺はまだ結構人が住んでいる

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私的にはオスロの中心街からかなり離れていて、住宅街とはいえ、ちょっと歩けば街の機能も学校もあるのに、そこにわざわざ小さな街を作ってしまうあたりが、福祉の行き届いた世界なんだろうと感心してしまう。

交通機関も十分に整っているらしいし、貸自転車もこの街まではカバーしているので、ここで生活するのに不便さは感じないだろうな。

 

更に川沿いを歩き続けるとレンガ造りの街に出る。

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ここをNydalenというのかは知りませんが、オスロの川沿いでよく見るレンガ造りの建物が連なっています。

どうやらこちらも元工場のようです。

 

川に架かる橋の入り口にあった看板。

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Miljoって水車って意味だったかな?

川の水力を利用して工場を稼働させたり、河川交通を使って製品を港まで運んだりしたのかな?

ゴールが見えないレーネ・マリーの家探しで頭が一杯な私は、カミッラにそんな質問をすることすら忘れていた。

 

こんなところにリコーのノルウェー支社。ガラス張りがノルウェーらしい。

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レンガばかり見ていたから、こういうガラス張りの建物を見るととっても新鮮。

この辺りから、川で泳ぐ人たちがいた。

 

・・・カミッラと待ち合わせといえば、私は少々我慢強かったかもしれないと思う。

イタリアにいた頃から、カミッラとの待ち合わせは曖昧で、“ルーディのバールにいるから!”とか、“図書館にいるから来て”みたいな一言で、そこへ行くといないことも多く、なんとなくいそうな場所を探してウロウロしていると、どこかで会えたものだけど、それで良かったのは時間と心に余裕のあるナポリでの話で、オスロではそんな方法通用しないだろう、ただ、私はノルウェーでも同じような形で未だに彼女と待ち合わせしている。

 

恐怖の階段上り

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川遊びしている人たちを後目に更に進んでいくと、恐ろしい階段を発見。

まさか、これ登るの?!

ちなみに写真では、半分くらいで切れてしまっているので、階段の全長はこの倍くらいあります。

鉄の足場は、下が見えるので高いところが苦手な私は見ないようにしてひたすら登り続け、あと少しのところで力尽きて休憩しました。

登っている最中、ランニングに短パン、頭には汗を止めるターバン?姿の男女が数名、登ったり、降りたりしてエクセサイズしてました。

のろのろ登っていた私を追い越したり、すれ違ったりして、その度に揺れる階段が壊れたりしないか心配すらしてしまいました。

スポーツと無縁の私を知っているカミッラは、面白げにゴール地点でカメラを構えて私を録画してました。

 

階段を上り終えると天国?屋根の上に生えていたカモミール

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階段を登り終え、川から離れると庭付き戸建てが連なる住宅街へと出ました。

この辺はオスロ西側にあるような割と昔からある住居区なのではないかと思います。

幹線道路に出ると、何だかずっごい田舎に迷い込んでしまったような、家と道路以外は何もなく、道を歩く人すら見当たらない。

妙なのどかさが怖いくらいで、異次元空間がパラレルワールドかタイムスリップしたかと言う感じだったのに、カミッラは街の様子に見覚えがあると、どんどん先へ歩いて行く。

どうやらゴールはもうすぐのようだ。

 

恐怖すら感じる夏のノルウェー 

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 郊外らしく、大きなスーパーもあったが、60年代の映画にも出てきそうな小さなコンビニがあって、小さな窓と手動のドアがあるだけで、中の様子は全く分からない。

でもアイスの冷蔵庫や雑誌、新聞ラックは店の外にあるという、防犯面はあまそうな店。子供がアイスを選んでいる様子をみると、駄菓子屋感覚なんだろうな。

 

やっと着いた!

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 例のコンビニから少し歩いたところにあった、一軒家の二階部分がシェアハウスになっているようで、親切な同居人が玄関を開けに来てくれた。

レーネ・マリーは体調が悪かったらしく、部屋を暗くして寝ていたそうだ。

カミッラの友達を数人知っているが、彼氏と別れた後、ずっと失恋を引きずって、中々立ち直れないタイプの人が一定数いるのだが、彼女もこのタイプなのか、まだ少し引きこもっていたいのかと勝手に推測している。

同居人の案内でアパートに入れてもらい、共同部分にあたるバルコニーへと案内された。

 

レーネ・マリーのアパートのバルコニー

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イケアとかでよく見かけるバルコニー活によさそうな広さと景色。

欧米人はこういうところで日光浴するんだろうな。

やっと出てきたレーネ・マリーは赤毛で華奢な北欧女性で、アジア人から見たら羨ましいほどの白い肌と均等のとれた優しい顔立ちがとってもキュートな人だったけど、健康的かと言われると、どちらかと言えば病的な感じがした。

確かに、具合が悪くて寝ていただけはある。

 

それでも精一杯のノーザン・ホスピタリティー

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ノルウェーコーヒーとリンゴ入りのカスタードプリンを振舞ってくれました。

・・・ヴィーガンと言えずに食べてしまいました。

シナモンとバニラが効いているので、久しぶりの卵も生臭く感じない。

カップもアンティーク調でとってもステキ。

嬉しいことに、つい最近までイタリアのトリノにある修道院で半年ほど修行していたらしく、イタリア語が少し通じます。

精神的に弱っているとき、知らない人を家に招くのは辛いはずなのに、親切に接してくれたことに、心の大きさを知る。

そんな彼女もイギリスにある女子修道院でボランティア活動をしつつ、自分の道を探ることにしたとのこと、そこは入会に厳しい戒律はなく、結婚を決めたら自由に出ることが出来るので、カトリックの施設とは違うらしい。

 

小一時間の後、再出発

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もう少しいても良かったけど、そろそろ出発しないと、帰りが遅くなってしまう。

この日差しで時間が感覚が分からないくなってはいるが、既に午後7時近くなっている。

短い時間でもレーネ・マリーとやっと知り合えて、優しい空気の夕方のおやつを楽しめて良かったです。

これから徒歩でアパートに帰ってても20時過ぎになるので、クラッカーとインスタントスープ、果物で簡単に夕食を済ませ、お茶の飲んだら、寝る時間になるというのに!恐ろしいことに、ここから徒歩でうろ覚えのイーゴルの家へ行こうと言うことになりました。

イーゴルとは、ナポリ大学時代に知り合った、友人の元カレで、ノルウェーとイタリアのハーフなんですが、オスロで働いているのは知っていたものの、私が彼と最後に会ったのは2006年でしょうか?

カミッラも最後にメール交換したのが2010年頃なので、10年ほど会っていなかった人の家へ、突撃訪問するということです。

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何にもない道をまた歩き続けて、例え、うろ覚えのイーゴルの家を探し当てたとしても、引っ越ししているかもしれないし、不在かもしれないし、そもそも彼の人生ではモブキャラな私たちのことなんて覚えていないかもしれないし・・・

そんな不確実なことは止めて、家に帰ってゆっくりしませんかね?